蛸畑の話

 現在、鳴海には「蛸畑」という地名が残っている。
「鳴海日記」によると、「蛸畑 是は此処にて、猟仕候。蛸など釣申候由、申伝候。此処より上迄入海之由山の谷間なり。此処古き貝から、塚より出申候。只今の相原村より南の山畑に罷成候。」と記され、「小治田之真清水」には、大きな蛸(たこ)が里芋畑を荒らしているのを通行人が見つけ、驚いた顔をしているという愉快な図(左図(が記されている。
 また同書引用の「本朝食鑑」には、蛸(たこ)が夜ばかりか昼も人のいない隙に芋を食いに来て、時には長い竿で打って獲ることもあるという記述があり、畑に出かけて蛸を釣るとは珍聞きわまりない話である。
 しかし近くにある扇川(おおぎがわ)が住古入江であったことは事実であり、そこでは蛸(たこ)が釣れたのである。